大豆の四回転ジャンプ

 自分の理論の正当性を証明するためには、実験でデータを収集して、裏付けをとって実証しなくてはいけない。そして、仮説はやがて定説として広く認められるようになる。
 しかし、すべてのデータが同じ方向を示し、データのすべてが正しいわけではない。ほとんどの場合、科学者は自分の仮説に有利なデータだけを利用し、反するデータには目を瞑る。卑怯だからではない。限られたデータの中で検証することになるので、多くのデータが積み重ねられるまで、ある程度致し方ないことだ。
 また、定説として常識化していることでも、ある日突然覆って間違っているとされてしまうこともある。
 
 最近では大豆イソフラボンがちょっとした騒動になっている。農林水産省はWEBの大豆の健康機能性で大豆の効能を詳しく紹介していて、イソフラボン

  1. 細胞のガン化を抑制
  2. ガン細胞の増殖を抑制
  3. 骨粗鬆症の緩和
  4. 更年期障害の緩和

に効果があるとしているが、イソフラボンの解説ページでは、

 なお、日常の食生活において大豆由来食品から大豆イソフラボンをバランスよく摂取していれば健康に良い影響がありますが、大豆イソフラボンにはホルモン様作用があることから摂りすぎた場合には健康に悪影響がある可能性があります。サプリメントのような「大豆イソフラボンを濃縮、あるいは強化した食品」から大豆イソフラボンを摂りすぎることには注意してください。

と注釈をいれている。
 
 現在の見解については、大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aに詳しく、根拠となるデータは、
大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方(第33回会合修正案)(内閣府食品安全委員会) に羅列してある。
 特に、妊婦や乳幼児の過剰摂取には注意した方が良さそうだ。その他にも摂りすぎると甲状腺機能の低下や乳がんや白血症などのがんの抑止作用の低減などがあると読み取れる。(と思う。)
 もっともどこをめくっても、あくまでも

大豆イソフラボンの安全性評価については、現在、食品安全委員会において審議中です。食品安全委員会の評価結果が出れば、国民の皆様にわかりやすく解説します。

と歯切れが悪い。これが現在のところの最大限の公式見解なのだろう。
 
 2月25日の毎日新聞の朝刊は丸々一ページを使って大豆食品の効能を紹介していた。記事を読む限りほとんどが家森幸男京都大学名誉教授の見解であり、イソフラボンは「骨密度を高くする。血圧を下げる。悪玉コレステロール値を下げる。女性の乳がん、男性の前立腺がんの死亡率を下げる。」と解説してある。最後に、家森さんは食品安全委員会の評価は『正しいとはいえない』ので、さらに『科学的な議論が必要だと指摘』していると締めていた。

 家森教授については、このページに簡単に紹介してあった。おそらくは大豆食品の普及のために真っ先に旗をふった学者のひとりなのだろう。急に、政府が反論し始めて焦ったかな?

 要は、バランスのとれた食事が一番大切であって、どんなに優れた食品でも極端に偏って食してはかえって身体に良くない。
 だから、毎日大豆だけを大量に食べている人を除いて、急に大豆食品を避ける必要はないと思う。
 
 前にも述べたように定説とされていることも正しいとは限らない。常識とされていることに裏切られることもしばしばあるのだ。

 権威のある先生とは思うが、毎日新聞の取り上げ方には何らかの裏があるように思えてならない。現状では食品安全委員会が公式に反論できないのだから、かなり公正さに欠けた記事だと言える。

 もし、委員会が正式に異なる見解を発表した時、毎日新聞はお詫びの記事を掲載するのだろうか?
 その時には人命に関わる重要な過ちとなる。政府が公式に危険性を指摘しているのに、真っ正面から反対して、もっと大豆食品を食べろと推奨している。後から、定説だったからと言う言い訳は通用しない。
 
 白黒をはやく決めてくれないと私も困るんですが・・ネ。さて?