ゲドはケドだった。

 ゲドを読む。とはスタジオジブリの映画『ゲド戦記』DVDの販促物で、販促物としては初めての文庫本という体裁だということで少し話題になり、DVDを買う気もレンタルする気もなく、レンタルする価値さえ見いだせない映画ではあったのだが、文庫本はもらってきた。
 
 読み始めて数ページ、『本当のクレオパトラは黒人でした。』という記述に愕然とし、その前後の出鱈目な記述にいっぺんに読む気をなくした。
 そもそもクレオパトラが最後の女王となった古代エジプトプトレマイオス朝アレクサンダー大王の将校だったプトレマイオスが征服したエジプトに興したヘレニズム王朝で、彼はマケドニア出身のれっきとしたギリシャ人だ。
 もちろん、大昔の人種構成と現在とは大きく違う。しかし、ヘレニズムの彫刻を見ても黒人らしい特徴はない。クレオパトラギリシャ人だったと言うべきである。
 
 ゲドを読む。の巻頭を飾るこの文章の筆者は、奴隷はすべて黒人で、しかもアフリカに住んでいるのはすべて黒人という誤解に誤解を自ら上塗りした間違った大前提を疑おうともしていない。アメリカなどの黒人奴隷は近代以降のことであり古代では戦争の敗者が奴隷にされていたし、エジプトは昔も今もアラブ系が主流だ。
 
 こんなミスプリに近い文章から始まるなんて、この販促の文庫本は映画の内容と同じなのか。