HC

 NFLではヘッド・コーチは一番忙しい職業だと言われている。
 
 作戦を描いたゲーム・ブックはアタッシュケースよりも厚く、毎年そのほとんどを担当コーチと共に更新するのはヘッド・コーチの仕事だ。使い古した去年のゲーム・ブックはそのままでは使えないし、選手の移動が多く毎年のように陣容が変わる。
 
 ゲーム・ブックの用意が調えば直ぐにキャンプが始まり、作戦を選手に徹底しなければいけない。
 
 シーズンに入れば、相手チームの分析と作戦を練るだけでアッと言う間に一週間は過ぎる。
 
 レギュラー・シーズンが終わり、一ヶ月のプレーオフを戦い、スーパーボウルとなる。一昨年のスーパーボウルで優勝したチームのヘッド・コーチは試合後直ぐのインタビューで「我々は他のチームよりすでに一月遅れている」と来期の抱負を語った。
 
 コーチ職と選手とは別の次元の仕事だと考えられている。引退後コーチになる人もいるが、当たり前のごとくコーチとしての特別な能力を求められる。選手時代とは違う芸術的な創造性が必要だ。
 スター選手がコーチになることは珍しく、ヘッド・コーチになった人はいない。
 
 野球もサッカーも、日本では過去の栄光だけで監督やコーチを選んでいるように見えるが、適任者は少ないのではないだろうか?